ケニー・オメガに学ぶ、成功するセルフプロデュースの仕方

今日、大卒の就職率が77%で8年連続増加しているという報告が文科省より上がった。その背景には景気が好調で求人が増えているということである。経済状態がある程度充実すると人間には承認欲求が出てくることはご存知であろうか。「周りがちゃんと評価してくれない」「俺はもっとできるのに・・」と思っているのであれば、それは低いレベルでの承認欲求の現れである。しかし、世の中簡単には認めてもらえないもの。そこで、セルフプロデュースを成功させることでその実力を認めさせたケニー・オメガから成功するセルフプロデュースを学ぶことにする。



セルフプロデュースとは

セルフプロデュースとは「自己演出」を意味する。これは自分自身の価値を認識し、その価値を効率的に表現して売り込んでいくことである。「周りがちゃんと評価してくれない」と感じる場合、このセルフプロデュースが足りないか、自身の価値を勘違いしているのどちらかである。

一般的にセルフプロデュースは以下のことを行う。

・自分の価値を知る
・自分の特徴を知る
・価値を見てもらう
・理想の自分像を作る

まず、自分の価値を把握すること。自分のストロングポイントを知ることは大きな武器となる。次に、自分の特徴を理解する。これは自分の価値をどのように活かすことができるかを知ることに大いに役立つ。そして、理想の自分像を作り、ゴールを決める。そして最後には自分の価値を最大限に活かす方法で見てもらう行動に出る。これがセルフプロデュースの一連の流れである。

ケニー・オメガとは

今、新日本プロレス、いやプロレス界を熱く盛り上げている外国人レスラーといえばほとんどの人がケニー・オメガを挙げるであろう。もし、昭和のプロレスしか知らないなーと言う人もいるかもしれないので少しばかり説明をする。

ケニー・オメガは新日本に参戦しているプロレスラーで2018年8月3日現在IWGPヘビー級チャンピオンである。カナダのウィニペグ出身でWWEスーパースターのクリス・ジェリコとは同郷である。モジャモジャの長髪とロングタイツ、筋肉質の鍛え抜いた体をしている。また日本の漫画やアニメ、ゲームなどにも詳しく、持ち技である片翼の天使はファイナルファンタジーVIIから、VトリガーはストリートファイタVからきている。また、日本語も話すことができ、2016年のG1クライマックスで優勝した際、リング上でしばらく英語で話していたものの観客の多くは英語が理解できなかったため場内が静まり返る。するとオメガが「だから分からないだろう。だから今回だけ、オレが日本語を話す」と突如日本語で喋ったことで会場は沸き起こることがあった。

また外国人がメインとなるヒールユニットのBULLETCLUB(バレットクラブ)のリーダーでもあり、シングルプレイヤーとしてのみならず、チームとしての立ち回りも上手いレスラーである。。

自分の価値を知り退団したWWE

オメガは日本に来る前はROHなどの北米のインディー団体に参戦し活躍していた。のちにWWE系列の団体であるDSWに参戦。このDSWはWWE参戦するルートの一つでザ・ブラックハーツでおなじみのギャングレルはこの団体出身である。
(関連記事:これで身代わりもOK!?ザ・ブラックハーツに学ぶ、上手な入れ替わり方

WWE傘下の団体にい流のであれば誰でもWWEに参戦できる訳ではなく、またレスリング技術だけでも参戦できない。WWEに昇格できるのは技術に合わせて売りとなるキャラクターが必要である。そのため、WWEでは多くのギミックが施され、これがハマると一気にスターへと駆け上ることができる。多くの場合はプロデュースをしてもらうことで成功に近づくのだが、オメガはそれを良しとしなかった。

例えば「このムーブはこう言う名前にしよう」「この技の名前はクリーン・スイープにしよう」といったことや、髪型、コスチューム、サングラスなどギミックに合わせたセルフイメージの変更がオメガには合わなかった。レスラーとしての実績は皆無に等しいオメガだったが、他者が作る別人より、自分が作り上げるものに価値があるということをしっかりと理解していたからである。そして、自分の価値を高めるためにWWEを退団することとなる。

自分の特徴を知ったことでできた日本参戦

日本では2008年に初来日、DDTに参戦している。もともと日本マット参戦を希望していたがなかなかその機会に恵まれずにいた。そこで自分が得意とするファイトスタイルで通用する団体を考えるとDDTが候補として上がった。DDTでもそもそもリングの無いところで試合をするなどのエニウェアマッチを行っており、北米の路上王を名乗るオメガにはマッチすると考えたのである。そしてDDT宛に手紙を出したり、自身の出ているエニウェアマッチの動画を見てもらうことで認知・招聘してもらうことに成功している。

DDT参戦はオメガにとって運命的な出会いを果たすこととなる。北米の路上王であるオメガが日本の路上王である飯伏幸太と邂逅。二人はゴールデン☆ラヴァーズとして活動し、IWGPジュニアタッグのベルトを戴冠する。この試合でプロレス大賞のベストバウトを受賞したことでオメガの意識に変化が現れることとなる。

自分の価値をアピールするヒールターン

2014年DDTを退団し、新日本へ本格参戦。自身でクリエイトした「ザ・クリーナー」としてBULLETCLUBに参加してヒールターンを行う。似合っていた緑を辞め黒にイメージチェンジをし、田口の持つIWGPジュニアヘビーへの挑戦をしている。ヒールターンをしたことでオメガはヒールイメージを守るために日本語で喋ることをはじめ、様々なことを封印。それは理想像に近づけるために必要なことだった。

ザ・クリーナーとなったオメガは快進撃を続ける。IWGPジュニアヘビーの戴冠に始まり、AJスタイルズのWWE移籍に伴う追放劇の後にバレットクラブのリーダーとなる。またヘビー級転向後にインターコンチネンタル王者、G1クライマックス外国人初制覇、新設されたUSヘビー初代王者、そして6月9日に大阪で行われた試合でオカダカズチカを倒しIWGP王者となった。

理想を求めて

自分の価値を知り、それを活かすための自分でできることを模索し、自分で創造したキャラクターで成功したことはオメガのセルフプロデュースが成功したことを意味している。もし、違う誰かのプロデュースであっても大成功したかもしれない。しかし、それは本当の意味での成功か、といえばそうでは無いことがわかる。世の中を見回した時、なりたい自分になれたという人はどのくらいいるだろうか。それだけでもなりたい自分になれるのは稀なのである。

IWGPを戴冠した今、オメガは理想像へとたどり着いたのであろうか。これは、まだたどり着いていないのである。オメガ自身が自分のありたい姿を以下のように語っている。

「プリンス・デイビットとかAJスタイルズとかも同じように良かったよね」とか比べられたく無い。
誰かと比べられる存在じゃ無いんだ。
ケニーがベストで、ケニーの次が誰かとか・・・1位2位争いが必要ないくらいの存在になりたい。
俺はグランドチャンピオンになりたいんだ。日本で戦ったプロレスラーでベストになりたい。

これはオメガのプロレスラーとしての「志」である。セルフプロデュース自体はおそらく誰でもできるであろう。ただし、成功するかは別である。成功するセルフプロデュースはオメガのように理想像に近づくための「志」を持つ必要がある。その土壌の上で、自分の価値、自分への理解があり、見てもらうことが大切なのであろう。

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