インターネットが普及して高度情報化社会となった今、誰でも隠したいことが一つ二つはある、いや七つ八つはあるだろう。しかし、どこからか情報が漏れて隠せないことが多い。小さいことでも漏れてしまうのだが、新日本プロレスではレスラーの正体を隠すと言う大胆な手法がある。今回は獣神サンダー・ライガーを参考に、リバプールの風になるという正体の隠しかたを学んでいく。
獣神サンダー・ライガーとは
TVにもよく出演し、そのインパクトある風貌からも国民の80%は知っているであろう獣神サンダー・ライガーだが、もしかして知らない人もいうるかもしれないのでちょっとだけ説明をしようと思う。
全身を覆う白と赤を基調としたコスチュームに長いツノと毛量も凄い長髪のマスクマン。身長は170cm程度でジュニアヘビー級の象徴でもある。昔は小柄だったが、ビルドアップした身体はヘビー級の選手とも普通に戦えるものであった。ファイトスタイルは掌底やあびせ蹴りといった骨法とロメロスペシャルといったルチャ、90年代に流行ったボム系のライガーボムなど、様々な要素を混合したオリジナルなものである。日本ではロメロスペシャルの第一人者として呼び声が高い。
ジュニアヘビー級の象徴とされるわけだが、1990年代ライガーをはじめ、ザ・グレート・サスケなどみちのくプロレスと関わりを持ち、プロレス界にジュニアヘビー級の一大ムーブメントを起こした人物でもある。当時、プロレス団体が乱立する時代背景があり、多くの団体にジュニアヘビー級の選手がいた。体格にさほど恵まれないために新日本や全日本といったメジャー団体には行けない選手もたくさんおり、その受け皿としてインディー団体に能力はありながらも小柄な選手が流れていた。そして、ライガー自身も体格に恵まれたわけでなく、メキシコ経由で入団した逆輸入タイプである。
そして1995年にライガーがメジャーと遜色のないインディー団体のレスラーとともにジュニアヘビーを盛り上げるべくスーパーJカップの開催を提案。この大会で当時あまりなの知られていないFMWのハヤブサやみちのくプロレスのTAKAみちのくが注目されるなど、その後の活性化にも大きく繋がっている。
リバプールの風になった
そんなライガーだがマスクマンであるため、もちろん中の人の正体は不明で、と思いきや堂々と明かされている。その名は山田恵一である。これは何度もマスクが破られ素顔が晒されているのにそのまま戦ったり、実況の辻アナウンサーが暗に山田山田言ったりと全く隠すそぶりさえ見せていないのである。
前述しているがライガーは逆輸入レスラーである。正確には身長制限に引っかかった山田恵一がメキシコに渡り、そこからグラン浜田経由で新日本にたどり着いている。小柄ながらもIWGPjrに挑戦したりと新日ジュニアの若手として期待されていた山田だが、1989年1月にイギリスのリバプールで消息を絶つこととなる。そしてその数ヶ月後に東京ドームに赤とゴールドのコスチュームの獣神ライガーが登場する。
週刊誌の記者に山田恵一のことを聞かれたライガーは次のように答えている。
「山田は死んだ。リヴァプールの風になった」
そう、山田は風になっていたのである。この本人が過去をこのように語るスタイルはその後の飯塚にも引き継がれることとなる。
(関連記事:「昔の飯塚高史は等々力渓谷のほこらに封印したんだよ!」飯塚高史に学ぶ、過去との決別の仕方)
日常会話でこのような表現が使われると、「この人頭おかしんじゃないか」と思われがちだが、ちょっとロマン溢れるプロレスではこのような詩的表現も有効である。
実は隠せていない正体
さてライガー本人は「山田はリバプールの風になった」と言うのだが、実況の辻アナウンサーをはじめライガーの正体について、1989年4月の東京ドームのデビュー戦でも山田山田と言っている。ギミック上正体不明であるため解説席にいた山本小鉄は試合に見入っていたとお茶を濁している。
ライガー自身も1990年に行われた誠心会館の青柳政司との異種格闘技戦にてマスクを破られ視界が悪くなったことから自分で脱ぎ捨てている。その結果、山田と言いたくて仕方がない辻アナウンサーは「山田」「山田」と連呼するのである。
このことからも正体を隠すには周りの協力が必要である。仮にリバプールで運よく風になったとしても周囲の協力がなければすぐにバレてしまう。特に名前を連呼するような人がいる場合は注意が必要だろう。人は隠し事するにしても一人では成し遂げることができない、ましてやゲスい人が周りにいるのであればなおさらである。できれば隠し事がない様にはしたいが、どうしても必要にあるのであれば身近な人こそ気をつけるべきであろう。
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