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「ちなみにヒゲってのは○毛に当たるんですか?何毛なんですか?」獣神サンダー・ライガーに学ぶ、アナウンサーの黙らせ方

現代のストレス社会、多くの人が気付かないうちにストレスを溜め込んでいる。このストレスを上手に発散できるのならいいが、発散できずに溜め込んでしまう人も多い。ストレスの大半は人間関係で発生するもので、何気ない一言がストレスの原因となってしまうこともある。そこで、今回はよく喋る人を圧力をかけずに黙らせてしまう技術を持つ獣神サンダー・ライガーにその技術の真髄を学ぶ。



獣神サンダー・ライガーとは

もう国民だけでなくアメリカ人にも認知されているという覆面レスラーの獣神サンダー・ライガーだが、ひょっとして知らないという人がいるかもしれない。また正体が山田恵一ということも公然の秘密であることも知らないかもしれない。コアなプロレスファンであれば「リバプールの風」という現象を耳にしたことがあるだろう。
(関連記事:「山田はリバプールの風になった。」獣神サンダー・ライガーに学ぶ、正体の隠し方

ライガーはデビルマンなどで知られる漫画家永井豪原作の「獣神ライガー」のタイアップ企画として誕生した。当時赤と金の全身コスチュームでツノも無かったが、鍛え上げられた身体は見受けられ小さいながらも分厚い体躯であった。デビュー戦は1989年4月24日東京ドームの小林邦昭戦である、

そして原作と連動してライガーも進化。ライガーからツノが生えマスクの顔の部分が現在のような感じのファイヤー・ライガーへ。そして色が変わり現在のサンダー・ライガーへ。ファイヤー・ライガーを抜いてライガーとサンダーライガーのコスチュームを比較すると全く別物に見えるが、ファイヤー期を経たことでその進化の過程は理解ができることだろう。またサンダー・ライガー以降のコスチュームは、黒や白、真っ赤、ハーフ&ハーフなど大きな試合に合わせたものが数多くある。

また1994年2月24日日本武道館で当時IWGPジュニア王者だったライガーがIWGP王者である橋本真也とシングルマッチをしているが、この時はツノが無く上半身裸のコスチューム(通称バトルライガー)だった。このバトルライガーバージョンはこの後も対格闘技色の時に使われている。

2002年11月30日横浜文化体育館のパンクラスの試合に直前に退団した佐々木健介の代わりに出場。この試合はMMAルールで行われ、ツノなしマスクにトランクス、オープンフィンガーグローブを着用していた。緊迫する中、浴びせ蹴りを出すが鈴木はこれを躱しグランドの展開、最後はチョークスリーパーで終わる。

試合後、鈴木が「ライガーさん、ちょっとだけ錆びてましたね。でもやっぱりアンタは最高だよ!やっぱり世界の獣神ライガーだよ!ありがとうございました!」と言うと、「もう一回やろう。このままで済むか、お前。なあ、すぐにやっちまったらこんな目に遭うから、お前、2年ぐらい余裕よこせ。そしたら次はぶち殺してやるから!アァ!」といって固い握手を交わすというものであった。

聞き取りやすい声

プロレスラーはどちらかというと声が聞き取りにくい印象がある。長州や天龍、本間などはその代表ではあるが、リングで興奮した状態でマイクアピールをするもんだから上手くマイクを使えていない。そしてまた怒鳴りつけるような早口であるため聞き取りづらくなっている。

しかし、ライガーは滑舌もはっきりしており、また聞き取りやすい声の持ち主である。そのため穏やかに話す時は聞き間違うことはないし、怒鳴り声も何を言っているか聞き取ることができる。そのためかゲスト解説に呼ばれることが多い。

レスラーの解説では山本小鉄亡き後はマサ斎藤、山崎一夫、ミラノコレクションATといった引退したレスラーの流れがあるが、現役として真壁刀義、そしてライガーが呼ばれることもある。解説席でのライガーは解説というよりは一プロレスファンのようなコメントをするので一部のものすごく好感が持たれている。

アナウンサーをも黙らせる高度なテクニック

そんな素敵な声質のライガーが2018年2月10日大阪府立体育会館で行われた「ザ・ニュービギニング in 大阪」での解説が真骨頂と言えるだろう。この日の第5試合で外道vsBUSHIの試合が組まれる。事件は外道のフサフサのヒゲを切るための大きな枝切り鋏を持って入場してきたBUSHIのマスクを外道が剥がそうとするところから始まる。

外道がマスクの紐をほどきトップロープに結びつけBUSHIをロープから離れられないようにする。外道がギリギリ届かないくらいに距離を置いてヒゲを抜いてみろと挑発をする。この様子をみてライガーが突飛な疑問を持ち発言する。

「ちなみにヒゲってのは陰毛に当たるんですか?何毛なんですか?」

ヒゲはヒゲである。陰毛ではないのだが、ライガーにとっては不意に湧いた疑問なのであろう。そしてこの発言は喋り続けることを生業とするアナウンサー(この時はテレビ朝日の吉野真治アナ)の思考を停止させたのである。これは決して「陰毛」と言ったから停止したのではない。想像のできない角度から想像のできない言葉が飛び込んできたからなのである。

動物は想像外の出来事が発生した場合、動きが止まって身を守ろうとしてしまう。もちろんそれは人間にも当てはまる生理現象でもある。野生動物ではそこからの回復が早いが、人間は危機訓練していない限りはどうしても身を守るために止まるのである。ライガーはこの現象を理解し、疑問に思ったことを口にしたことでよく喋る人間の動きを止めた。この想像のできない角度から想像のできない言葉を適切に使うことができれば、誰でもアナウンサーのようなよく喋る人間も黙らせることができるであろう。

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