YOSHI-HASHIの「俺のハートは砕けたか?」に学ぶ修辞法

先日、プロレス界に物議を醸し出した名言の「俺のハートは砕けたか?」が生まれた。新日本プロレスのユニットCHAOSの一員であるYOSHI-HASHIの口から発せられた言葉である。
今回、誕生すべく生まれた名言であるが、名言の誕生にはTPOが関係するため、奥ゆかしい日本ではなかなか出てこない。YOSHI-HASHIの名言が生まれた背景に一つに修辞法を上手に使ったこともあり、今回はそこに注目していきたい。



物議を醸し出した名言

2017年9月24日のDESTRUCTION in KOBEのメインイベントでケニー・オメガのもつUSヘビー級王座戦があり、ジュース・ロビンソン相手に初防衛。そしてその後の会見にYOSHI-HASHIが登場した。

前年の同じ大会で行われたIWGP挑戦権利証をかけた戦いでオメガに破れたことを持ち出して、「俺のハートは砕けたか?」と王者であるオメガに対してUSヘビー級王座への挑戦を表明した。

しかし、この時に使った「俺のハートは砕けたか?」という表現がのちに物議を醸すことになる。本来であれば強調に関する修辞法を使ったものであれば「俺のハートは砕けたか?」「いや、砕けてないだろ」と続くものである。
日本人であれば自然とこの以降の文を読み取るのだが、如何せん相手はケニー・オメガである。多少日本語を話すことができるオメガであるが、さすがにこれは読み取ることができなかった。

結果としてUSヘビー級王座戦が組まれることになったのだが、オメガにとっては理解できない展開だったと言えるだろう。

「俺のハートは砕けたか?」に別の修辞法を使ってみる

修辞法とは文章やスピーチなどに豊かな表現を与えるための一連の技法のことで、今回使われた強調に関する修辞法以外では比喩、擬人法、オノマトペなどがある。

名言や、名スピーチ誕生の背景に多く存在し、表現者やライターにとっては必須の技術とも言えよう。

比喩を使ってみる

比喩は物事・事象を関連するものに置き換えて使う表現で、比喩であることがわかる表現方法を直喩、直接わからないように表現する方法を暗喩という。では「俺のハートは砕けたか?」を比喩で表現するとしたらどのようになるであろうか。

「俺のハートはダイヤモンドのように硬くて砕けない。」(直喩)
「俺のハートはダイヤモンドだ。」(隠喩)

今回もし、比喩を使用していた直喩は伝わったであろうが、隠喩であればおそらく同じように物議を醸していただろう。もし、「俺はダイヤモンドだろ?」とかいってた場合はさらなる物議を醸していたかもしれない。

擬人法を使ってみる

擬人法とは人間以外のものを人間にたとえる技法。一時期よく目にした戦艦などの擬人化もこの流れを組む。では「俺のハートは砕けたか?」を擬人法で表現するとしたらどのようになるであろうか。

「俺のハートは、まだ元気だろ?」
「俺のハートは、生きてるだろ?」

この場合ハートが人間に近いため、人に置き換えた表現を使ってもあまりピンとこない。そういう意味では擬人法を使っても同じような物議を醸していただろう。

オノマトペを使ってみる

オノマトペとは擬音語・擬態語のことで「ウキウキ」「ワクワク」「ドキドキ」などである。日本語にも多く見られる表現だが、使い方を間違えたり多用してしまうと幼稚な表現に見えてしまう。では「俺のハートは砕けたか?」をオノマトペで表現するとしたらどのようになるであろうか。

「俺のハートはドンガラしたか?」
「俺のハートはガシャーンガシャーンしたか?」
「俺のハートはバキッガシャッピューってしたか?」

これじゃバカっぽい。この修辞法でも間違いなく物議を醸していたであろう。

今後も生み出される名言に期待

このように色々な修辞法を使ってみたが、しっくりくるのは直喩であるのがわかったであろうか。つまり比喩にしてもわかるように伝えることが大切である。YOSHI-HASHIが使った強い強調は悪くない。いや適切な使い方だったと言える。ただ、相手が日本語は話せるが外国人であったために修辞法がわかりにくかったということが問題なのである。

会話というものはキャッチボールである。相手に伝わる表現を使ってこそ成立する。「俺のハートは砕けたか?」はプロレス的には名言である。いや、今回は日本語が多種わかるオメガにもうまく伝わらないことで物議を醸し、名言となったわけである。

プロレス界にはたくさんの名言が存在する。これはプロレスを面白くするエッセンスでもあり、レスラーの個性を際立たせることにもつながるのである。
YOSHI-HASHIにはこれからももっとたくさんの名言を生み出してほしいと思う。

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