3月は卒業や異動という人生の節目になりやすい時期で、多くの別れと多くの出会いがあります。そして78%の人はこの人間関係が入れ替わる時期に合わせてイメージチェンジを計り髪型を変え、心機一転新年度を迎えるようです。しかし、卒業も異動もない場合はよほどの自信がなければイメージチェンジに踏み切ることができません。ましてや大胆に前髪を切ることなんてできません。それは周りの目を気にし過ぎるという日本人特有のものかもしれません。このようにイメージチェンジに踏み切れないという人でも大胆に前髪を切る方法を藤波辰爾の飛龍革命から学びましょう。
飛龍革命とは
飛龍革命を知る上で、その背景を理解しておく必要があるだろう。今から28年前の1987年新日本プロレスにIWGPヘビー級王座が誕生する。この1987年はある意味新日本プロレスでは激動の年だった。この頃新日本ではテレビ視聴率の低迷や、アントニオ猪木がサトウキビによるバイオ燃料精製に新日本プロレスの収益を投資して失敗したことなどから経営が傾き、起死回生のために色々なアングルが考えられていた。
なぜかマサ斎藤に手錠をかけて連れ去るという行動に出た海賊男の登場と結果として繋がった猪木vsマサ斎藤の巌流島決戦。(関連記事:宮本武蔵と佐々木小次郎だけじゃない。マサ斎藤に学ぶ、巌流島での過ごし方)
また、長州が新日本に戻ったことで起きた「俺たちの時代だ」で有名なナウリーダーとニューリーダーの世代闘争もこの年である。そしてビートたけし率いるTPG、そしてビッグバン・ベイダーの登場。こちらは急遽、猪木vs長州戦に割り込む形で猪木vsベイダーに変更なり、観客が暴徒化したという顛末がある。
新日本プロレスとしては試行錯誤しながらも猪木を軸に置いてやる形となったのだが、それが藤波としては我慢ならなかった。
やれるのか、本当にお前
翌1988年4月22日、沖縄県立奥武山公園体育館の控え室で事件は起きる。猪木・藤波組vsベイダー・マサ斎藤のカードが行われ、猪木・藤波組は敗北。精彩を欠いた猪木に対して藤波が詰め寄る。
「ベイダーとシングルやらせてください」
藤波の要求はベイダーとの対戦。これを猪木に要求したのである。猪木の性格からしたら遠慮せずに勝手にすれば良いということなのだが、会社の方針として猪木vsベイダーを軸にしていることから会社の方針に逆らう形になるため猪木に直訴したわけである。
そして猪木が「やれるのか、本当にお前」と言い左手で藤波の頰を張ると、条件反射で藤波が張り返す。猪木の張り手より良い張り手を返したので猪木が一瞬ぐらつくのである。そしてこの後、藤波は猪木が引くほどの驚きの行動に出る。
いらないです、こんなもの
猪木の手を振り払った藤波は道具箱からハサミを取り出し、突如前髪を切り出すドラゴン・ヘアカットを行なったのである。
流石の猪木もドン引きで「待て、待て、待て」と止めに入るが、「いらないです、こんなもの」といいハサミを手放す。そう、直訴して誰も何も言っていないにも関わらず前髪を切ったのである。
髪の役割
では、藤波はなぜこのような行動に出たのだろうか?
そもそも髪の役目は何かご存知だろうか。同じ哺乳類である猿は全身を太い体毛で覆われているが、人間の場合は頭部に集中している。髪の毛は平均して約10万本生えていると言われ、多い人なら14万本生えていると言われている。
役割その1:見た目
極端な話で言えば「人は見た目」と言われている。「メラビニアンの法則」によれば、初対面の人について「言語」「視覚」「聴覚」で矛盾した情報が与えられた時に3つのうちどれを優先して判断しているかを調べた結果、「視覚」が55%、「聴覚」が38%、「言語」が7%だった。つまり半数以上が「見た目」で判断しているわけである。
藤波は前髪を整えた後にこう言っている。
こんななってもお客さん呼びますからね。〜〜〜〜 お客さんこれきっと、ちっとも喜ばないですよ、これ。
藤波は前髪を切ったことで「見た目」への影響が大きいことを理解して髪を切ったということがわかる。これは観客が入ろうが入りまいが関係ない、興行のことなんか関係ない、ベイダーと戦うんだという藤波の決意とエゴの現れである。
役割その2:頭部を守る
見た目を気にしなければ髪の毛はいらないのではないか?と思われがちだが、もっと大切な役割がある。それは頭部の保護である。髪の毛には「メデュラ」と呼ばれる芯がある。そしてこのメデュラは中に空気を微量ながら含んでいるため、エアバッグのような働きがある。一本で考えると無いに等しいが、大量にある場合は衝撃を吸収して脳を守っているのである。
プロレスラーにはスキンヘッドの選手も少なく無い。古くはアブドーラ・ザ・ブッチャー、キラー・カーン、現在の武藤敬司など見た目と頭部へのダメージ、そして大人の事情を鑑みてスキンヘッドになっている。逆にモジャモジャした頭といえば、ブルーザー・ブロディ、アンドレ・ザ・ジャイアントなどが挙げられる。
このことから前髪を切った藤波にとって前頭葉の防御力が若干低下したとも言えるのであり、不退転の決意表明だったのであろう。
大胆な前髪の切り方ドラゴン・ヘアカット
組織の意向に逆らい、藤波がのし上がる宣言をしたことから飛龍革命が始まった。その後、ベイダーとの王座決定戦を制して2代目のIWGPヘビー級王者となるのである。これは飛龍革命、いやその時に行なったドラゴン・ヘアカットをすることにより猪木を困惑たじろがせ、かつ不退転の決意で自分を追い込んだ結果と言えるのである。
もし会社員で社長や上司に直訴することがあるなら突如目の前で髪の毛を切ることでチャンスが舞い降りてくるかもしれない。その時は最初からハサミを持っていてはいけない。一歩間違えるとこれは凶器として見られ捕まる可能性がある。だからまずは道具箱を近くに置いておくこと。そして直訴して相手の混乱を引き出すタイミングで取りに行って前髪を切ると良い。この時に決してハサミを人に向けてはいけない。
藤波は勇気を示してくれた。周りのことなんか関係ないという強い意志とハサミがあれば人は動くものである。そうすることであなたにとっての飛龍革命が始まるのである。
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