刺身のつまというべきか、ボールペンのキャップというべきか。それ一つで見るとそこまで価値がなそうでも全体で見ると重要な役割を果たしているものが多々あることに気づく。プロレスにもそうのような技があるのはご存知だろうか。代表的なもので言えばヘッドロック。
どちらかというと脱出する方法も多いのであまり効果のない絞め技の印象があるが、ここで一つ考察をしてみた。
ヘッドロックとは
ヘッドロックとはその名の通りヘッド(頭)を固める(ロック)するもので、相手の頭を脇の下に持っていき、一気に腕で締め上げる技のこと。片腕でしめるのではなく、両手をクラッチして剥がされにくくしている。
とまあ、基本的なところではあるが実は約束事が一つある。その約束事とはヘッドロックはかける側の左脇に抱え込むこと、である。
ヘッドロックはやはり試合序盤に使われることが多いわけだが、この約束事とも関係がある。ヘッドロックに入る流れだが、いきなり相手の頭を鷲掴みにして脇まで持っていきギュッと締めるようなことはしない。まず試合序盤に多い展開としてロックアップをする。ロックアップとは左腕を相手の首の後ろに回し引きつけ、右手を相手も同じように回してくる左腕を上から掴む。つまり、左手で引きつけ、右で相手の引き腕を切る、相撲で言えば左四つのような感じである。ちなみにネプチューンマンはこの状態で相手の強さを測ることができる。
このロックアップの状態から右腕で相手の左腕を内側から跳ね上げて、その隙に首に回している左手で相手の頭を引きつけ、左脇まで下げて締め上げることでヘッドロックが完成する。もちろん、左足を後ろに下げて頭を胸のあたりで反りながら締めあげると見栄えも良くなる。
もしヘッドロックをされたらどう返す?
ヘッドロックは技を食らう側は頭を締められるものの、両手は自由だしコシコシも高い位置にあるので比較的に動いて返しやすい。試合展開や選手の持ち味によって返し方も変わってくる。
<ロープに振る>
一番多い展開としてはロープに振るパターンが多い。ヘッドロックされながら後ろに下がり、十分な距離をとったのちに左手でクラッチを切るように動きながら頭を引き、さらに右手で相手の背中や腰を前に強く押しだす。特にロープの反動を使って押し出すと勢いがつく。このことからヘッドロックはロープワークのきっかけづくりの一つになる。
<クラッチを切り相手の腕を締め上げる1>
体を左に動かし隙間を作りながら、ヘッドロックされている相手の腕のクラッチを切る。そのまま相手の左腕を左回しに締め上げることにより攻守を入れ替えることができる。なおこの後の動きとしてはグラウンドで脇固めや背中にエルボーといった流れがある。
<クラッチを切り相手の腕を締め上げる2>
体を左に動かし隙間を作りながら、ヘッドロックされている相手の腕のクラッチを切る。そのまま相手の左腕を持ち、相手の背中に左腕を回すことで攻守を入れ替えることができる。
<バックドロップ>
一番わかりやすい返しならバックドロップになる。相手の左脇に頭があるのですでにバックドロップを仕掛ける状態にある。
ヘッドロックからの流れ
かけたはいいものの反撃をくらいやすいヘッドロック。ではヘッドロックをかけたあとはどのような動きがあるのか。腰を落として動きを封じヘッドロックを続けるものがあるが、そのほか代表的なものは以下のものだろうか。
<顔面にパンチ>
相手の頭部をコントロールしているので、右手で相手の頭部や顔面にパンチを与えダメージを与える。
<首投げ>
左回りに腰を相手の下に入れ、その反動を使いながらテイクダウンをする。そのままロックを離さなければグラウンド状態でヘッドロックを維持できる。ただし、勢い余って周りすぎたり、油断して相手の変えさりすると逆にフォールを取られかねない。
<ブルドッキング・ヘッドロック>
ヘッドロックの状態で相手を引っ張るように前に走り大きくジャンプ。尻餅をつくように倒れこむことで、相手の首へダメージを与える技。
<タイガースピン>
初代タイガーマスクがやっていたもので、くるくる回りながら相手を倒す技。
1. まず左脇に抱えるヘッドロックの状態から右脇に抱える状態に移行する。(1回転目)
2. 次に相手の左手を取り、左回りに旋回し腕を決めながらバックを取る。(2回転目)
3. さらに左に回転しながら倒れこみ、左足で相手の膝裏を押すようにして相手を倒す。(3回転目)
4. 右足で相手の左足首を押さえつけ両足で挟み込むようにすることで、左足を決める。
この動き3回転を一気に行いテイクダウンを取ることで見栄えがする。プロレスを見ない人がこの技を見た場合、何がどうなったかわからないくらいの技である。
ヘッドロックの存在意義から学ぶ
これからもわかる通りヘッドロックはプロレスの基本である。技のつなぎであったり、きっかけづくりだったりと軽く見られがちだが実はとても大事なもの。身の回りでも「こいつ使えない」や「なんでここにいるんだろう」と思わせる人も実はつなぎ役であったり、きっかけづくりで存在しているのかもしれない。だから一部分で判断するのではなく、もっと活躍している部分にフィーチャーした方がいいだろう。
脈絡もなく大技が繰り広げられるようりは、つなぎ技がしっかりとして、構成があって納得がいく大技の方が見ていての満足度は高いのではなかろうか。