大仁田厚に学ぶ、上手な前言撤回の仕方

2017年10月31日。プロレスラーの大仁田厚の引退試合が行われた。実に7度目である。
「プロレスラーの引退とロックバンドの解散は信用するな」との格言があったり、なかったりするが、7度目ということは6回引退を撤回していることになる。
通常、なかなか前言撤回もできないものであるが大仁田はなぜ何度も前言撤回できるのか。今回は大仁田厚について考察してみる。



大仁田厚とは

大仁田厚と言えば一時期は馬場猪木に次ぐ知名度があったレスラーであるが、改めて人物を紹介してみよう。
「邪道」を掲げて知名度をあげた大仁田であるが、元々は全日本プロレスのレスラーだった。全日本ではジュニアヘビーで活躍をしていたが、試合中の事故により膝を粉砕骨折をしてしまう。
再起不能の状態であったが、どうにか復帰を果たすもののかつてのようなパフォーマンスが発揮できないため引退をすることとなった。

その後、苦渋の時期を迎えるが5万円と電話一つでFMWを旗揚げをする。このFMWでの活動が大仁田の知名度を引き上げることとなる。
膝の怪我が原因で従来のプロレスラーとしてのパフォーマンスを発揮できないことから、大仁田はデスマッチ路線に活路を見出す。FMWでのデスマッチ路線は成功で、特に有刺鉄線電流爆破デスマッチはインパクトが強く、これ以降日本で広がるデスマッチ路線のパイオニアでもあった。

かつて所属していた全日本プロレスが王道であることに対して、王道を取らないスタンスから邪道を掲げていた。またプロレス界ではUWFの隆盛もあり、従来のプロレスでもない、U系のような格闘色でもない斬新なものであった。

また、試合後ボロボロで涙を流しながら行うマイクパフォーマンスでは多くのファンを魅了、涙のカリスマとも呼ばれており、上島竜兵などのモノマネから拡大していった。

繰り返される引退と復帰

引退と復帰の状況をまとめると以下のようになる。

<1回目の引退>

1985年の全日本プロレス時代、膝の故障が原因でパフォーマンスが発揮できず引退となる。→1989年FMW旗揚げで本格復帰する。

<2回目の引退>

1995年のFMW時代、ハヤブサと引退試合を行い、ハヤブサにFMWを任せ引退となる。→1996年FMWでミスター・ポーゴの要請によるタッグ結成で復帰する。

<3回目の引退>

2003年フリー時代、アフガニスタンでの平和のためのプロレス大会を開催する際に引退発言。→同年WJにて復帰する。

<4回目の引退>

2005年フリー時代、大学卒業と同時にプロレス卒業興行で引退。→2006年ZERO1大仁田厚提供奉納試合で復帰する。

<5回目の引退>

2009年長崎県知事選に立候補するために供託金300万円争奪戦で引退。→落選したため復帰する。

<6回目の引退>

2010年大仁田興行で引退。→同年復帰。

<7回目の引退>

2017年ファイヤープロレスリングのさよなら大仁田、さよなら電流爆破興行で引退。→?

プロレスラーに引退はない、というのが通説であるがなぜ大仁田は引退を行うのか。これはもうリップサービスに他ならない。
大仁田に限らず、一度引退をして復帰を果たしたレスラーは大勢いる。橋本真也も小川直也と負けたら即引退マッチを行い一度は引退するものの、ファンの後押しがあったことで復帰を果たしている。長州力ですら大仁田の執拗な対戦要求に応じる形で復帰をした。
またみんなが大好きなテリー・ファンクも大仁田より早く膝が原因で引退をしているが、彼も大仁田と同じように復帰をしては引退を繰り返している。

ただこのように引退をしてすぐに復帰する選手が多いことから、川田利明のように引退を明言しないレスラーも存在する。

上手に前言撤回に必要なもの

大仁田の復帰のタイミングを見ていると前言撤回のベストのタイミングがわかる。1回目の復帰には時間を要しているが、復帰するまでに様々な葛藤があったことがわかる。この時はおそらく復帰するしか選択肢がなかったため、復帰に4年と時間をかけたことや苦難の中自分で復帰の場を切り開いたこともあり、前言撤回も容認された。

では2回目以降はどうなのか。全て1~2年内での復帰となっている。つまりこれは復帰を前提とした引退である。このことから前言撤回をする適切なタイミングは4年以上空ける、もしくは比較的早めに行うことがベストと言える。
そして長期間を空ける時は理由には真実を、短い期間であればどうでもいい内容を大そうな理由づけとした嘘をつくことが必要である。

この嘘を使った短期での前言撤回は早めであるほど有効である。「舌の根が乾かぬうちに」を繰り返すことでリップサービスとしての認知を獲得することができる。そうなると前言撤回をしたことへの非難も最小限に抑えることもできる。

何事も中途半端が一番良くない。適切なタイミングを見計らい、上手に前言撤回をしていこう。

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